美しいあの人
祐治の代わりにものを書き始めるようになってから、
あたしの店での成績はあからさまに下がっていた。
なので、もしあたしが店を辞めると言っても正直誰も止めなかっただろうと思う。
それくらいあたしの仕事へのやる気が下がっているのは一目瞭然だった。

正直あたし自身も、キャバクラを辞めてもいいように思っていたのだが、
それに反対したのは松井さんだった。
「エリちゃんにも気分転換は必要だ」
「店で働くのが気分転換になるっていうの?」
「そりゃそうだよ。
これまで執筆なんかほとんどしてこなかった人間が家にこもってずっと原稿を書いていたら絶対腐るし、世の中から取り残される。
俺が言うんだから間違いない」
< 123 / 206 >

この作品をシェア

pagetop