美しいあの人
「ああまあ、そりゃあ松井さんが言うならそうなんでしょうけど、だけどさあ。
これまでみたいな出勤の仕方してたら仕事で小説なんか書けないよ。
週三出勤とかにしたら、そんな半端だったら辞めちまえって言われるような気もするし」
「それに」
松井さんが真剣な顔をした。
「なんですか」
「お前、店を辞めて家でずっと原稿書いているのを祐治に見られて構わないのか」
ああそうか。それはまずい。
祐治が自分で小説を書いているような気になるには、
あたしが外に出ている時間が確かに必要だ。
「けど、どうするの」
「俺に任せとけ」
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