美しいあの人
「スーツ、買ったの?」
祐治が嬉しそうにネクタイを直す。
あたしが戻ってくるまでずっと着たまま待っていたのだろう。
なんて可愛らしい人なのだ。
抱き寄せたい気持ちをこらえる。
スーツにしわがよってしまう。
「はい。本の帯に私の写真を載せるそうなので、芙美子が選んでくれました。
なんだかまた高いらしいんですけど、
おしゃれなほうが女性読者の受けがいいだろうと松井さんも賛成してくれまして。
どうですか? 似合います?」
「よく似合うよ」
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