美しいあの人
芙美子さんの名を祐治の口から聞くのは、少しだけ胸が痛むが
彼女も西条祐治を作り上げる部品のひとつなのだから仕方ない。
「そんな顔しないで。
服を選ぶのが芙美子でもエリがいないと私は作家になんかなれませんでしたよ」
祐治の胸に顔を預けて、その言葉を反芻する。
少しだけ変えて。
エリがいないと作家にさせてもらえなかった。
エリがいないと原稿が書いてもらえない。
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