美しいあの人
お昼ご飯を祐治と一緒に食べてから自分の部屋へ戻って原稿を書いていたのだが、
その部屋を松井さんが訪れた。
「見ろよエリ。帯と著者近影用の写真ができた。
やっぱり俺の目に狂いはなかったな」
写真に写っているのは、確かに祐治だったが
自分の目で見るよりもさらに美しいような気がした。

この前見せてくれたスーツを着て、遠くを見つめるような祐治。
「すごいなあ、エリは。こんな美男子をいいようにしているんだからな」
「あたしだけのものじゃないでしょう」
「それもそうだな。芙美子のセンスはたいしたもんだ。
女性の憧れの美形作家を売り出せることになるとは俺も思わなかったよ」
自分で芙美子さんの話題を出して後悔した。
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