美しいあの人
第六章

かげにひなたに

「西条祐治、新刊発売!」
打合せの時に松井さんがくれた新しいポスターを、ダイニングの壁に貼ってみる。
写真はポールスミスのスーツで決めた祐治の写真。
やっぱり祐治は美しい。
こんなところにポスターを貼っていたら祐治は笑うだろうか。
けれど、祐治がこの家にいない時でも祐治の姿を見ていたかった。
西条祐治の小説は、若い女性から二つの理由で人気があった。
男性作家なのに女性の気持ちが細やかに書かれており、
感情移入ができるというのがひとつの理由。
もうひとつの理由は、西条祐治本人の見た目が非常に素晴らしいということだ。
また、言動もなかなかに洒落ていてインタビューなども人気があった。
さらに、本人だけでなく恋人も美しいというのも、
西条祐治を憧れの恋愛作家として人気者にしたさらなる要因だった。
また、西条祐治は恋人がいることを隠すこともせず、
この人が私を支えてくれているのですと公言してはばからなかった。
芙美子さんはその点で非常に「作家・西条祐治」という商品に貢献した。
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