美しいあの人
半月前に祐治の心変わりを知ったのは、芙美子さんだった。
芙美子さんも、突然役者になりたいと言われて困惑し、すぐに松井さんに相談した。
松井さんも祐治を説得した。
しかし祐治は聞かなかった。

「気づいてしまったんですよ。私には、小説よりも役者の才能があるのではないかって」

祐治は、あたしにはそんなこと一言も言わなかった。
芙美子さんは、祐治が家に戻らないのを、
松井さんから諭されて気分を害したからあたしのところで気分転換しているのだろうと、
数日気に留めなかった。

あたしの仕事の進みが悪くなるのを危惧して、しばらく放っておいたそうだ。

しかし、あまりにも連絡がないので祐治の携帯に電話をかけてみたら
その携帯は芙美子さんの部屋にあったというわけで、
慌ててあたしに連絡をよこしてはじめて祐治がいなくなっているのが分かったのだ。
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