美しいあの人
「私の周りにはいないタイプの女性だったので、興味を持ちました」
興味を、持った? あたしに?
「うそ」
またそんな言葉しか出てこない。祐治さんが照れたように笑った。
「本当ですよ。知らないことを知りたいと思って、創作意欲をかき立てられます」
創作意欲? あたしも祐治さんを知りたいと思って興味がわいた。
「創作意欲、ですか?」

祐治さんが焼酎を一口飲んで頷いた。
「ええ。小説を書いているんです。
エリさんみたいな女の人のことを書きたいと思っていたのでエリさんのことを教えてほしい」

この瞬間にあたしは恋に落ちたのだと思う。
いや、初めて彼を見たときから恋には落ちていたんだろう。
けれど、あたしのことを知りたがってくれたというそのことで、
あたしはさらに舞い上がった。
あたしのことを話し、祐治さんのことを聞き、
彼がこれから書こうとしている小説について色々な話をした。

松井さん、あなたの連れてきた作家の中にこんな素敵な人はいなかったよ。
あたし、小説家というものを誤解していたかもしれない。
今度会ったら謝ります。
千鶴さんからそろそろ閉めるわよ、と言われるまでの数時間、あたしと祐治さんは話し続けた。

あたしはとても、幸せだった


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