美しいあの人
とはいえあたしにとっても小説を書くという行為はすでに祐治を喜ばせるだけでなく、
仕事として身に付いていたようで祐治がいないとつまらないと思いながらも
それなりに仕事はこなしていた。

自分でも現金なものだと思ったが、
祐治が来なくなってから自宅でも仕事が自由にできるようになったため能率が少し上がっており、
これまでみたいに締切直前までファミレスにいて、
松井さんの目の前で半泣きになりながらノートパソコンを叩いているようなことはなくなった。

もう書けないと言いながら涙をこぼしてキーを叩いているのは、
主に自宅のダイニングテーブルだった。

それでもちゃんと原稿は上がるのだから不思議なものだ。
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