美しいあの人
何があったのかわからないが、松井さんがまた何か思いついたのは間違いないだろう。
あたしは書きかけていた原稿を中断して、
人を入れるには躊躇してしまうような部屋を眺め回してため息をつく。
祐治がいた頃は、彼が綺麗にしてくれていたのに。
壁のポスターに話しかける。
「ねえ祐治。帰ってきてくれないと、あたしほんとにだめになっちゃうかもよ」
洋服やバッグが散乱していて、
座る隙間もないような部屋をなんとなく片付けているフリを続けているうちに、
ぷりぷり怒った芙美子さんと、
どうして怒られているのかわからないというような顔をした松井さんが
あたしの部屋へとやってきた。