美しいあの人
芙美子さんが機嫌の悪いついでに、部屋が汚いことをなじる。
「忙しいのはわかってるけど、散らかっているにもほどがあるわよ。
それなりのものを身につけるようになったんだから
住まいも綺麗にしなくてはダメじゃないの」

はあすみませんと、口の中だけで謝る。
芙美子さんは、最近はあたしに似合うものを選んだりしてくれる。
おそらく、自分の周りに置いておく人間の世話をするのが好きな人なのだろう。
祐治の時のように高価なブランドものだけ、というのではなかったが、
芙美子さんはあたしに良く似合うものをチョイスしてくれていた。
服の代金は給料からしっかり天引きされていたけれど。

松井さんは、ソファの上に積んであったあたしの服を無造作に床に放り投げて、
自分の座る場所を作った。
それを見て芙美子さんが悲鳴めいた声を上げたが、
あきらめたのかキッチンへお湯を沸かしに行く。
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表紙・目次

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