美しいあの人
あたしは何がなんだかわからないので、
自分の定位置であるダイニングチェアに座って、
ものごとが始まるのを待つことにした。

「エリさんカフェオレでいい?」
ハイいいです。
いつも色々すみません。
カフェオレのカップが三つ、ソファの前のローテーブルに置かれる。
あたしはダイニングに座ったまま。
芙美子さんは、床にクッションを置いて座っている。

口火を切ったのは芙美子さんだった。
「エリさんの意見も聞くべきだと思うわ」
松井さんが憮然とした顔で反論する。
「意見もなにも。
俺が提案したことでこれまで君達に損をさせたことがあったか」
芙美子さんも憮然として返す。
「ないけれど、こればっかりは損得じゃないわよ。ねえエリさん」
ねえと言われても。

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