美しいあの人
芙美子さんが、小さく咳払いをしてから話しだした。
「祐治が戻って来たら離婚届を出そうと思っているの。
もう半年待って戻ってこなかったら勝手に出すわ。
仕事のことはエリさんと相談して決めたいの。
松井さんは損はしないんだから俺が決めたのでいいだろうって言うんだけど……」
幸せそうな二人を見て、あたしは笑顔になった。
周りの人が幸せになるのを見るのは嬉しい。
あたしは自分の考えを話すことにする。

「ありがとう。色々考えてくれてるんだよね。
でも、あたしは西条祐治の小人さんのままでいい。
ていうか、そうでいたいの。
祐治が戻って来ても来なくても、あたしは祐治のために書いていたい」
松井さんと芙美子さんが顔を見合わせる。

「だから相談なんかしないで勝手に決めちまえって言ったのに」
「まあ別に会社を運営するのに問題はないけれど……」
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