美しいあの人
これまでどおりに西条祐治の名前で書くことにも問題はないのだ。
もしあたしが独り立ちしてエリ自身を作家にすることにしたら、
祐治の帰る場所がなくなってしまう。
あたしはそれが一番困る。
「ごめんなさい、わがままを言って」
二人が困った顔をしているのがわかっていたから、
下げた頭を上げられなかった。

そしてあたしはもう一つわがままを言わなくちゃいけない。
「もし祐治が帰って来たら、元通りに迎え入れてあげてほしいの」
顔をあげたら、やっぱり二人は困った顔をしていた。
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