美しいあの人
すでに西条祐治という作家は、
祐治の言葉をあたしが文字にすることで成立しており、
祐治のビジュアル面を利用する必要はなくなっていた。

祐治はあたしが家で何か書き物をしていることについて、
松井さんと芙美子さんの仕事を手伝っていると思い込んでいる。

そして自分が変わらず小説を書いていると信じている。
もしかしたら、本当に小人さんが書いていると信じているのかもしれない。

祐治のビジュアルが必要なくなったため、
祐治の仕事は今やあたしの世話をすることと、
あたしに元ネタとなるようなことを話して聞かせるだけだ。

もちろんあたしにとってそれはとても重要なことで、
祐治の言葉がなければうまく書けないような気がしている。

 客観的には間違いなくこれは「ヒモつき」という状態であり、
祐治の暮らしはあたしの稼ぎで支えられているのだが、
あたしは祐治から十分に恩恵を受けている。

なにせ祐治は美しいのだ。
この美しい人が側にいてくれるのなら、あたしはもう何もいらない。

〈了〉
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