美しいあの人
すっかり明るくなった歌舞伎町は、
もうすぐ冬だというのに生暖かい風が吹いていて、
なんだかすっきりしないあたしの気持ちをさらに落ち込ませた。

寒くもないのに、羽織ったコートの襟を立ててみる。

祐治さんに彼を好きだという気持ちを伝えた方がいいのだろうか。
拾ったタクシーの中でぐるぐると考えてみる。

祐治さんが好きだ。
でも祐治さんがあたしをどう思ってるかはわからない。

祐治さんにしか興味が持てない。
こんなこと初めてだ。
八つも年の離れた人に惹かれるのも初めてのことだし、
あんなに美しい人に出会ったのも、
あんな風に話が弾んだのも初めてだ。

つきあいたいのだろうか? どうだろう? わからない。
あたしはただただ祐治さんが好きなだけで、
あの美しい顔をずっと見ていたいと思う。
彼があたしの側であたしの話を聞いてくれたら嬉しい。
嫌われなければそれでいい。
だったら好きだなんて伝えない方がいいのだろうか。

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