美しいあの人
　松井さんはビールを一口飲んでから諭すようにあたしに言った。
「お前それ、結果はどうあれケジメつけたほうがいいんじゃないか。
男を作るななんて言えた義理じゃないけどさ。
そんなふわふわしてるのを見せられたんじゃ、俺だって会って素直に楽しいとは言えないよ」
「ごめんなさい」
なんだか申し訳ない気分になる。
あやまることないけどとかなんとか言いながら、松井さんがビールを追加オーダーした。
あたしの分も。
追加のビールがテーブルに置かれたところで、松井さんがジョッキを持ち上げる。
「じゃ、失恋の前祝いに乾杯するか」
「いやまだ結果出てないって」
「俺としてはそりゃ振られてほしいさ」
「ああまあ、そうでしょうけど……」
自分のお客さんにこんな風に思わせてしまうのは良くないなと思った。
やっぱりケジメはつけないとまずいのだろう。
祐治さんに自分の気持ちを伝えなくちゃと決意した。
ダメならダメで仕方ない。
そのうちなんとか、なるだろう。
これは松井さんがいつだったかカラオケで唄っていた歌だ。
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