美しいあの人
そうするうちに数週間が経ち、
夜ごとあたしの部屋に通ってきていた祐治は、
いつのまにかあたしの部屋へと住み着いている。

あたしもそれを拒否していない。
ちょっとだけ気になって「自分のおうちはいいの?」と聞いてみたら、
祐治は笑って
「実家だし、別に私がいなくても気にされませんから」
とだけ言った。だったらいいやと思った。

あたしと祐治はいつの間にか名前で呼び合うようになっていて、
あたしは仕事もまた落ち着き始めて、
時々は松井さんとアフターでせんばづるへ行ったりもしている。
千鶴さんから祐治のことをなにか聞かれたりしないかと心配だったけど、
別に聞かれなかった。

祐治があたしを拒否しないでくれることが、とても嬉しかった。
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