美しいあの人
あたしは祐治がいてくれればそれでいいし、
別に祐治がいることで余分なお金がかかっているわけでもないから、
祐治が居心地よければそれでいいと思う。

あたしの部屋にいることで祐治が仕事をしやすくて、
それで祐治の暮らしをちょっとでも支えてあげられるんだったら、
あたしは彼の力になりたい。それだけだ。

そもそも祐治があたしの部屋にいるようになってまだ二ヶ月くらいだ。
一緒に暮らすもなにも、そんな突っ込んだ話ができるほどの関係ではないようにも思う。

アンナと香織はまだ論議していたが、
グループのお客が入ってきたので三人ともマネージャーから席につくように促された。
仕事だ仕事。余計なことは考えちゃダメだ。
あたしと祐治がよければそれでいいのだ。

「こんばんわー、エリです。よろしくね。って前にも来てもらってますよね!」
客用の水割りを作りながら明るいキャバクラ嬢のエリを演じる。
あたしは相変わらずナンバースリーくらいの位置にいて、
どうも変な男にひっかかったようだというちょっとした噂のおまけも最近ついたみたいだが、
別に祐治は変な男じゃないしヒモでもないのでまったく問題無し。
そう、問題無し。
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