美しいあの人
セブンスターの残り一本を取り出そうとしてやめた。
自分のセーラムをハンドバッグから出す。
もしこのセブンスターが祐治の置き土産になってしまったら、
あたしはそれを吸ってしまったことを後悔するだろうから。
着替えもしないでパジャマのままソファに腰掛け、
セーラムに火をつけたところで携帯が鳴った。この音は祐治からの着信だ。
慌てて通話ボタンを押す。祐治の声が聞こえてくる。
「もしもし? ごめんね、まだ寝てましたか?」
「起きてた!」
「ならよかった。お昼どうしましょうか。なにか食べたいものある? 買って帰りますよ」
「じゃあパスタが食べたい。茄子とベーコンのパスタ」
「それなら買わなくても作れるじゃないですか」
「いいの」
「じゃあ十分くらいで帰るから待っててください」
「わかった」
良かった。祐治はいなくなったわけじゃなかった。
なんだかすごく安心した。
あたしは、祐治を失うことが怖くて仕方ない。


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