美しいあの人
祐治があたしの身体から手を離してカフェオレを飲む。
あたしは祐治が話し出すのを待つ。
マグカップをテーブルに置いた手は、またあたしの肩を抱き寄せる。
「前に、財布をいただいたって話はしましたよね」
黙って頷く。
そういえば、ヴィトンの財布をもらったといって帰って来たことがあった。
ブランドもののプレゼントはあたしも時々もらうので、その時はなにも気に留めなかったけれど。
「今日のも時計も全部、頂き物なんです」
「全部、って全部?」
さすがに驚いた。
この人は実はホストなのかと思ったが、
それではあたしが仕事に行っている間に家にいるわけがない。
「はい、全部」
祐治が神妙に頷く。
「デニムも、マフラーも、ドルガバのシャツも?」
「はい、全部。今日だけじゃないですけど」
出張ホストなら昼でも仕事ができるか……。あたしは素直に疑問を口にした。
「お客さんでもとってるの?」
大きな声で笑われた。
「そんな風に見えますか」
「だって、ねえ……」
こんなに美しい男だったら、そういうことで身を立てているとしてもおかしくない。
恋人ではなくても、美しい男を連れ歩きたいと思う女はいるだろう。
それこそ金を払ってでも。
けれど笑われるということは違うということだ。ではどういうことなのか。
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