美しいあの人
「この人この前、新人作家を四人も連れてきたのよ」
千鶴さんがお茶を飲みながらカウンターの中でため息をついた。
松井さんが恥ずかしそうに笑う。
「社会勉強だよ社会勉強」
「ねえ、それって半月くらい前じゃない?」
「そうよ。もしかしてエリちゃんとこにも連れて行ったの?」
松井さんが、しまったという顔をする。
責められるのを分かっているからだ。
「最初はみんなすごいおとなしかったんだけど、
お酒入ったらとんでもなくてさ。
へりくつは言うし、
しまいにはなんで君たちはそんな仕事してるんだとか
説教はじめるのまでいてさ。めんどくさいったらありゃしなかったよ」
相手が松井さんでなかったらこんなことは言えない。
松井さんはあたしが気を許している数少ないお客だ。
「いいじゃないか。
あとからエリちゃんは可愛かった、また行きたいって言ってたのもいたぞ」
「そうはいうけど、松井さんの連れてくる作家さんなんて
後から自腹で来て指名までしてくれる人なんか誰もいないじゃないの」
「そうねえ。うちにだって自ら来るような人たちじゃないものね。
キャバクラでいいお客さんにはなりそうもないわねえ」
千鶴さんが同意してくれる。
松井さんは接待のために作家をキャバクラへたくさん連れてくるけれど、
それらの人たちは難しいことばかり言って、
自分たちはこんなところで遊ぶ人間ではないのだと豪語しながら、
隙を見てはホステスの身体を触ろうとしたりする。
そうして楽しかったと言いながら自分の金で来ることはないのだ。
再び来ることがあったとしても、
それはやはり松井さんの金かもしくは出版社の金と決まっている。
そんなのはお客ですらない。
千鶴さんがお茶を飲みながらカウンターの中でため息をついた。
松井さんが恥ずかしそうに笑う。
「社会勉強だよ社会勉強」
「ねえ、それって半月くらい前じゃない?」
「そうよ。もしかしてエリちゃんとこにも連れて行ったの?」
松井さんが、しまったという顔をする。
責められるのを分かっているからだ。
「最初はみんなすごいおとなしかったんだけど、
お酒入ったらとんでもなくてさ。
へりくつは言うし、
しまいにはなんで君たちはそんな仕事してるんだとか
説教はじめるのまでいてさ。めんどくさいったらありゃしなかったよ」
相手が松井さんでなかったらこんなことは言えない。
松井さんはあたしが気を許している数少ないお客だ。
「いいじゃないか。
あとからエリちゃんは可愛かった、また行きたいって言ってたのもいたぞ」
「そうはいうけど、松井さんの連れてくる作家さんなんて
後から自腹で来て指名までしてくれる人なんか誰もいないじゃないの」
「そうねえ。うちにだって自ら来るような人たちじゃないものね。
キャバクラでいいお客さんにはなりそうもないわねえ」
千鶴さんが同意してくれる。
松井さんは接待のために作家をキャバクラへたくさん連れてくるけれど、
それらの人たちは難しいことばかり言って、
自分たちはこんなところで遊ぶ人間ではないのだと豪語しながら、
隙を見てはホステスの身体を触ろうとしたりする。
そうして楽しかったと言いながら自分の金で来ることはないのだ。
再び来ることがあったとしても、
それはやはり松井さんの金かもしくは出版社の金と決まっている。
そんなのはお客ですらない。