美しいあの人
祐治の気持ちに関わらず、
あたしと芙美子さんの間でどちらがどれだけ祐治を好きかということを競っても仕方ない。
それに、気づいてしまった。

「じゃあ、メンズフロアは見なくていいのね？」
コーヒーを飲み終わった千鶴さんがあたしに問いただす。
「うん。自分の服だけもうちょっと見て行こうかな」
「まあ、なんにしても」
千鶴さんがストールを巻き直しながら、まっすぐあたしを見て言った。
「エリちゃんが彼のことを好きだっていうのは良く分かったわよ」
あたしはなんだか恥ずかしくなって、黙って伝票をレジへと持って行く。
そう、あたしは祐治が好きだ。芙美子さんのことは関係なく。
芙美子さんが何をしようと、
祐治が誰を選ぶにしても選ばないにしても、
あたしは祐治が好きで、
あたしの側にいる間はあたしが出来ることをする。

芙美子さんと競うことはしない。
それでいい、問題無い。
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