美しいあの人
「祐治があなたのところにいるのは、きっと物珍しいからでしょうね」
ああ、あたしもそれは少し思ってますけど。
「あなたがいなければ、祐治は私の夫になったわ」
ああ、そうでしょうね。
祐治結果的には断らなさそうですよね。
「すぐに飽きるだろうと思っていたけれど、そんな気配もないし、
聞けば随分楽しそうだし、いったいどんな女の子なのかしらと不思議だったのよ。
意外だわ」
ああ、楽しそうなんですか。それはあたしも意外です。
「知ってると思うけれど」
芙美子さんがじっとあたしの顔を見つめる。
あたしは恥ずかしくて目をそらす。
「祐治が着ているものなんかを買っているのは私よ」
あたしは頷いた。
それしかできない。
「あなたは、生活の面倒をみているのよね」
そういうことになるんでしょうかね。
家賃もらってるわけじゃないしね。
はっきりそうとも肯定できないので、首を傾げてしまう。
「夜の仕事の女性に暮らしを支えてもらっているので心配はないと言っていたわ」
ああそうですか。
寝るとこ与えてるだけだと思いますが。家事は祐治がしているし。

「突然仕事も辞めてしまって、実家からも出て行って、
いったいどうしているのかと心配していたのよ。
メールも電話もろくに返してこないし。
ようやくつかまえたと思ったら、他の女のところにいるだなんて。
驚いたわ。どうせお金もろくに持っていないのでしょうから、
せめて着るものだけはきちんとしてもらわないとね」
静かに、だが一気に不満を述べられた気がする。
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