カクテル~Parfait Amour~
カラン、と、グラスの中の氷が崩れ落ちる。

「高裕さんがホストの時ね、月末が近づく度に苦しそうだった。どうしてもトップ3から落ちたくないんだって。
私ね、どうしてそこまで体張るの、一人でがんばるのって、泣いて言った。
ナンバー守るために、よくわからないけど高いお酒いっぱい飲んで、1日で八十万逆転したこともあるの。」
妃緒の考え方も理解できる。
たった数ヵ月前、ここで水野さんに泣いてすがっていたのを僕は見ている。

「ナンバーから落ちたって、私が高裕さんを好きな気持ち変わるわけがないのに、そんなに私のこと信じられないのかなって悲しかった。
だからつい言っちゃってた。そんな、仕事に命懸けるみたいなバカなことしないで、私がちゃんと働けば生活できるでしょうって。
だけど、それってちがうのかなって今は思うんだ。」

一気に話して喉が渇いたのか、グラスに手をのばす。
妃緒の言葉の続きを早く聞きたくてたまらなかった。

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