カクテル~Parfait Amour~
『リトル・プリンセス』


「眠ったの?」
「ええ。
変わった娘よ。今までずっと、寝る前に本を読んであげているんだけど、この頃はいつも、何か考えて聞いているみたい。」
「君の娘なんだから、変わっているのも当然だよ。」
「あら、半分はあなたの娘よ。」
ぼくたちは顔を見合わせて笑う。

ぼくたちの娘は五才になり、個性が一段とはっきりしてきた。
幼稚園では、友達と遊ぶより絵本を読んでいることが多いらしい。
家ではうさぎのぬいぐるみを離さないけれど、流行のアニメキャラクターには興味を示さない。
ぼくや妻の両親、親戚などからおこづかいをもらうと、決まって本屋に行きたがる。小さな名作童話の絵本を、もう50冊くらい集めている。

「あの娘、おもしろいことを言うのよ。
最近ひらがなが読めるようになったんだけど、『ファ』の音は鍵盤も音符も一つなのに、どうして『ふ』と『ぁ』って二つ字を書くんだって。
私も同じこと、親に聞いた記憶あるわ。」
「字を覚える前に、ピアノに向かうようになったんだものね。
小さいのにいろいろ考えているのか。
もっとたくさんの言葉を覚えたら、どんなことをぼくたちに話してくれるのか楽しみだ。」

いつか見せてもらった、妻の幼いころの写真に生き写しの娘。中身までよく似ているようだ。
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