カクテル~Parfait Amour~
 『キッシー・ローズ』


初夏の日の光の中で、彼女は微笑んでいる。
平日のバラ園を散策しているのは、ぼくたち二人だけだ。
手をつないでゆっくりと歩く。

「キレイ…」

彼女はぼくと繋がれていない左手を、バラの花に向かって伸ばした。

「気を付けるんだよ、トゲがあるんだから。」
「わかっています。」

手が切れるような白さ、これでもかというような赤、陽気なオレンジの中をぼく達は進んだ。

「これ、好きだな。」
彼女が立ち止まる。

クリーム色にも、淡いピンク色にも見える花の色だった。
大きすぎず、かといって物足りない大きさでもない。
「ぼくも、このバラが君に似合うと思う」

ぼく達はみつめあって、微笑んだ。
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