カクテル~Parfait Amour~
「心配なの。
あの娘は、びっくりするくらいに私にそっくりよ。
いろいろ感じて考えて、でもうまく伝えられなくて苦しい思いをきっとするようになってしまう。
勉強ができないって悩むことはなくても、分かり合える友達がなかなかできなくてさみしい思いをするんだろうな。」
確かに、ぼくと出逢ったころの妻もそうだった。
「あの娘が自分の力で解決しなければいけない問題ね。
だけど私は、なんとしてでもあの娘を守りたいって思う。」

母親は強い。何ヶ月もの間体の中で子どもを育てて、自分の命と引き換えにしてもという覚悟で出産に臨むのだから。その後も、休みのない育児が待っている。
大変なはずなのに、妻はとても幸せそうだ。

「君に似ているなら、心配ないよ。」
「どういう意味?」
ぼくはずっと言いたかった言葉を告げる。
「君の世界一はあの娘だと思うよ。
だけど、ぼくにとっての一番は君なんだ。出逢ったときからそれは揺らいだことがないんだ。
だから・・・」
これ以上は恥ずかしくて続けられなくなってしまった。

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