カクテル～Parfait Amour～

「何もない所で急に、呼吸が苦しくなって心臓が痛くなるの。死ぬんじゃないかってくらいの恐怖を感じる。
寝てても、大好きな授業の時も、いつそうなるかわからない。
食べると吐いちゃって、それが苦しいから食べないでいた。そうしたら、家から教室までたった５分の道のりを、三回休憩しなければ歩けなかった。
大学の健康診断で教えてもらった病院で、安定剤とかもらったけど、副作用で目が回って字も読めなくなった。
音感も狂ったの。全ての音が四分の一音低く聞こえたから、気持ち悪くて音楽も聞けなかったよ。」

「好きなこと、全部できなくなったってことだよね…？」
本とピアノを相手に暮らしていた18才の女の子には、致命的だったにちがいない。

「ごまかしながら通ってたら、夏休み前には治った。
でも三年生になったら再発。
児童心理学の授業で言ってる、精神発達が異常な子に私当てはまってた。
そうしたらまた発作が出てその授業に行けなくなった。だから、教員免許は諦めざるをえなかった。
他の授業は大丈夫だったから、無事卒業はできたの。卒論の評価はトップだったんだよ。
就職に関することも考えただけで発作。
一社だけ面接に行けた会社に運よく内定して、東京に出てきたんだ。
でも、就職して半年ぐらいで、また発作が出始めた。
わけがわからなくて苦しいよりはって思って、リストカットをはじめたの。」