カクテル~Parfait Amour~
救急入り口から入って少し待っていると、医者の元に呼ばれた。

「昨日病院で処方された薬と、残っていた薬を一度に全て飲んでしまったとのことです。
すぐに吐き戻して、ご自身で救急車を呼んでこちらに搬送されてきました。
処置が早かったので、しばらく休ませてあげれば体の方は心配ありません。
手首にも何本か新しい傷がありましたが、こちらも消毒してもらえれば大丈夫ですから。」

涙がこみあげてきた。

「俺はまた、妃緒を守れなかったんですね…」
「まだ間に合います。
月森さんはずっと、あなたの名前を呼んでいました。
自分は専門医ではないですが、今の月森さんに必要なのは、薬ではなく、あなただと思います。」

通された部屋で、妃緒はベッドの上に体を起こしてぼんやりとしていた。

「生きててくれてありがとう。
こんなに辛かったんだね。気付けなくてごめん。」
「死ねなくてごめんなさい。
迷惑ばっかりかける私なんか、死んだ方がよかった。」

「バカなこと言うんじゃないよ。」
自分でもびっくりするくらいの大声を出していた。
妃緒が男だったら間違いなく殴っていただろう。

「でも、薬飲んじゃったら、死ぬの怖くなった。」
ダムが崩壊したかのように、妃緒の目から涙があふれだす。

「びっくりさせてごめんね。よくがんばったね。
さあ、帰ろう。」

しがみついてきた妃緒をそのまま抱え上げてタクシーにのせた。
妃緒の家に寄って積めるだけの荷物をのせ、俺の家に連れ帰った。
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