カクテル~Parfait Amour~
「…」
僕は何も言えなかった。
この二人は本当に、相手を守るためならなんだってできてしまうのだ。
いつか僕も、ここまで強く誰かを愛せるのだろうか。

「おどろかれたでしょう。
妃緒を切った時は、自分を切る方がどれだけ楽かと思いましたよ。
切ることがエスカレートする可能性だって充分ありましたから、一か八かの賭けでした。
善悪は今もわかりません。妃緒とした約束は守りたかった。
何があっても、妃緒を裏切らない、味方でいると証明したかった。その一心でした。
俺のエゴだったのかもしれません。
だけど、妃緒はその日を最後に、自分を傷つけなくなりました。」

グラスを空ける水野さんの左手には、マリッジリングが静かに輝いている。

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