カクテル~Parfait Amour~
「そういえば、どうして結婚式でピアスを開けること、思い付いたの?」
十年間、きちんと聞いたことはなかった。
「なんだろう。覚悟したから、かな。
ピアスだったら、穴はふさがっても、開ける前と全く同じ状態には戻れないでしょう?
だから、生きている限り、あなたから絶対に離れないっていう想いを刻みたかったの。」
そう言って妻は笑う。

「物より思い出ってよく言うけれど、物や形で残せることも、幸せね。」
「君もやっと気がついたね。」

結婚する前もあとも、妻はぼくに物をねだることはほとんどなかった。
それは、自分が生きていた証拠を残したくないと思っていたからだと、少し前に聞いた。

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