カクテル~Parfait Amour~
その数日後、一年間オレの店で働きたい、守りたい人がいる、と告げられた。
一緒に働けることはオレにとって心強いことだった。ダブルワークになっても仕事に真剣に向き合う人だとわかっていたから、喜んでOKした。
だけど体への負担と、相手の女の子のことは気にかかっていた。

妃緒ちゃんに初めて会ったのは、彼と一緒に働きだしてもうすぐ二ヶ月になろうという二月の寒い日。
体調不良をおして出勤する彼が心配でたまらず、自分のお金で払うからと言って無理やりついてきた、そう言っていた。

妃緒ちゃんは、きちんと育てられて頭も悪くないことがよくわかる子だ。けれど頼りなげなところもかなりある子のように見えた。
両親によって整えられていた箱から彼が作った箱に移り、子犬のように半ば盲目的に素直に彼を信じて生きているようだった。彼が、生きるためのすべて。そんな気がした。そのくらい信じているから、彼の仕事を受け入れているのかもしれない。
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