カクテル~Parfait Amour~
だけど、二人が一緒にいる姿を何度も見ているうちに、彼のほうが妃緒ちゃんを生きる支えにしているように思わされた。守るものがあるから人は強くなれる、そう聞いたことがあるけれど、彼はまさにそうだったのだ。

「一年間、ありがとうございました。このヴェールも。」
妃緒ちゃんがオレの前に笑顔で立っていた。
「喜んでくれてうれしいよ。オレもあの人とまた一緒に働けて、本当によかった。
妃緒ちゃん、よくがんばってついてきたね。」
「私ががんばれたのは、高裕さんがどんな時も私を想って大切にしてきてくれたから。いつもいつも誠実に、まっすぐ向き合って見つめてくれたから。私の手を離したことが一度もなかったから。」

彼の最後の出勤の日、お疲れ様でしたと声をかけたオレに彼は言った。
「俺がここまでこれたのは、店のみんなとお客さんのおかげ。でも何より、妃緒がずっと、俺を信じてついてきてくれたからなんだ。」

この二人は同じことを言ったのだ。
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