カクテル~Parfait Amour~
少し安易なような気もしたが、僕はこのカクテルを選んだ。
「おまたせしました。『シルバー・ウイング』です。」
「これ、ですね。」
そのスーツには水野さんのかつての職業の後輩らしく、翼をかたどった銀色のブローチがつけられていた。

「カクテルっておもしろいんですね。今までシャンパンを飲むことが多かったんですが、勉強してみます。」
そう言ってシルバー・ウイングを飲み干すと、深夜とも早朝ともつかない時間の町の中にとけていった。

今の話からすると、妃緒が初めて水野さんの働く店を訪れたのと、この店にやってきたのは同じ日だと考えるのが自然なように思う。この店に入ってきた時間、終電で帰っていったことも合わせて考えてみる。
おそらく、初めて見る夜の世界とそこで働く水野さんの姿を見て、心がオーバーフローを起こしたのだろう。それを静めようと、一人で先に水野さんの所を出て、ここにたどりついたということか。
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