カクテル~Parfait Amour~
また新しい年を迎えた。
春とは名前ばかりで、一年で一番寒い時期だ。
今お客が誰もいないということはもう一時間もすれば混みだす、そんなことを経験から思ったが、こういう時間を見計らうことにかけては天才的な人がいることを忘れかけていた。

「またカンが当たったみたいね。」
妃緒はカバンを二つ持っていた。
「今日は荷物が多いんだね。どこかに行ってきたの?」
指定席に座る妃緒におしぼりを渡す。
「ピアノのレッスン、ちゃんとまた通うことにしたの。私が18才まで習っていた先生の後輩にあたる人を紹介してもらったんだ。
今日は、そうね、バイオレットで少し変わったのを飲んでみたいな。」
「了解。」

妃緒がカウンターの上で広げている楽譜を見て思いついたレシピを試してみる。
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