カクテル~Parfait Amour~
『アースクエーク』


ぼくに起きた、大きな地震の話をしよう。

大正12年、ぼくはとある華族の家で、執事のようなことをしていた。
この家でぼくの母は住み込みで働いており、母が亡くなった後も、ぼくはこの家での生活と仕事を許されていたのだ。

主人に頼まれた書類を持ち、食堂のドアに手を掛けようとした。
中から言い合いをしているらしき声が聞こえてくる。

「どうしてなの、お父様…?
あと一、二年はこの家で好きにすごせばいいって、おっしゃったではありませんか?」
娘は泣いているらしい。

「わかっておくれ。
私の方にも、お前の母上の方にも娘は一人だけだと、お前もわかっているだろうに。」
主人が力なく言う。

「私だって、お前にこんなことはさせたくなかったのだよ。」

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