カクテル~Parfait Amour~
ドアが開いた。
涙に濡れた娘が出てきた。
ぼくはこの娘と兄弟のように育ってきていた。

「お嬢様…」

ぼくは思わず声をかけた。
まっすぐにぼくをみつめた後、階段をかけ上がっていった。

「ご主人様。」
ぼくは食堂に入った。
「すまなかったね。
例の資料だね。急ぎではないから、置いていってくれたまえ。」

「お嬢様が何か…?」
思わず聞いてしまった。

「いや、あの子は急に何かを言われると混乱してしまうのだ。
お前も知っているだろう。
妻も明日まで戻らないものだから、思い詰めぬよう、折りを見て声をかけてやってもらえないか?」
「かしこまりました。」

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