カクテル~Parfait Amour~
「こんばんは」
「いらっしゃいませ。」
「ママ、CLOSEDの札が出てたけどいいの?」
「いいのよ。」
今日はこの三人のために、開店時間を二時間繰り下げた。
「二十歳の誕生日おめでとう。そして、はじめまして、舞咲ちゃん。」
水野さんと妃緒の一人娘の舞咲ちゃんが先週、はたちの誕生日を迎えた。
今日は彼女のバーデビューだ。

ここに初めて来たころの妃緒よりスッとした雰囲気なのは、水野さんに似たところなのだろう。白の半そでニットのワンピースがよく似合う。
三人並んでカウンターに座るが、真ん中は妃緒だ。
僕がカクテルを作る過程を、大きな黒い瞳を輝かせて見ている。この瞳は妃緒にそっくりだ。
「目の前で見るのは初めて。すごい、カッコイイ。」
そう素直に口にする舞咲ちゃんを二人は優しく見つめる。

「おまたせしました。『デビュタント』です。」
「きれい。チェリーがかわいい。」
「本当。」
よく似た笑顔で母娘が笑う。
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