カクテル~Parfait Amour~
「好きなところに座りなよ」
僕はそう言いながらも、カウンターの奥から二番目の席にコースターとメニュー、おしぼりを置いた。

妃緒はいわゆる両利きで、左側に人がいない方がいいと言う。
混んでいる時は一番奥に座らせるが、今はまだ客が妃緒一人だけ。
そういう時はいつもこの、奥から二番目の席に座らせる。

一番奥の席にカバンを置いて、妃緒が腰かけた。
メニューをさっと見ると、お気に入りのティフィンフィズをオーダーした。

「了解。
妃緒は本当にティフィンが好きだね。
この店のティフィンはほとんど妃緒が飲んでるよ」
僕は笑いながらそう言って手を動かし、妃緒の前にグラスを置く。

一口飲んだ後もまだ、妃緒はメニューをみつめている。
いつもそうなのだ。
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