カクテル~Parfait Amour~
電車に乗り込み、二時間後、ぼくは海のそばの小さな駅へ降り立った。
砂浜に目をやると、間違いようのない、彼女の姿があった。

走り出したのはどちらが先だったのだろう。
ぼく達は、これでもかというほどに抱き締めあった。
「私はあなたに、きれいな思い出だけを残したかった。
ぐちゃぐちゃに泣いたりしない、少女漫画みたいに、恋に恋するみたいな完璧な恋の思い出を…」

「ぼくにとっては、君の存在こそが、完璧な人生に必要なものだよ。
ぼくは医者でも神様でもない。
だから、君の命を延ばしてあげるとは言えない。
けれど、君に残された時間を幸せなものにすることはできる。
君の人生の物語の終わりが、ぼくと一緒にいて幸せだったという言葉で締め括られるのなら、ぼくはその物語を抱き締めて生きる。
君の物語を、ぼくに完成させてほしい。」

どのくらい抱き合っていたのだろう。

二人で空を見上げると、今月二度目という満月が昇っていた。
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