カクテル~Parfait Amour~
『ライラ』


「待ってて、今降りるから。」

そう言って彼女は、白のバレエシューズをベランダから投げて落とした。ぼくはそれを下でキャッチする。

「ちょっと待って、どこから降りるの?」

彼女はいたずらっぽく笑うと、ベランダの手すりを乗り越えた。
そして柵に結びつけられた縄ばしごをつたって降りてくる。
最後の一段に足をかけた時、ぼくは近寄って彼女を抱き降ろした。

「びっくりした?」

ぼくは彼女に靴をはかせながら答える。
「びっくりしたよ、もう。
二階からだからまだいいけれど、危ないよ。」

「一度やってみたかったんだ。
禁断の恋って感じがしない?
結婚したらできないでしょう?」
髪をかきあげて笑う。


ぼくは彼女の夢をもう一つ叶えてあげようと思い付いた。

「ねえ、部屋に戻ってベランダにいてよ。」

怪訝そうな顔をする彼女をドアの中へとうながした。
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