カクテル~Parfait Amour~
彼女の姿がベランダに現れたのを確認して、ぼくはさっきの縄ばしごを昇り、柵の外側に立った。

「お言葉どおり頂戴しましょう。
ただ一言、ぼくを恋人と呼んで下さい。
すれば新しく洗礼を受けたも同様、今日からはもう、たえてロミオではなくなります。」
「まあ、だれ、あなたは?そんな夜の闇に隠れて、人の秘密を立ち聞くなんて。」

みつめあって笑った。

「まさか、本当にやってくれるなんて…」
「あこがれてたって言ってたよね、ロミオとジュリエットのバルコニーの場面に。
恋の翼で飛び越えます。」
ぼくは手すりを越えて、彼女と並んだ。
月が白銀色に輝いている。

「ロミオは確か、月に想いを誓おうとするんだよね。」
「そうよ。
だけどね、本当に、月とか神様とかに誓うくらいなら、あなた自身にかけて、想いを誓ってほしいな。
だって、それが一番だもの。」

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