カクテル~Parfait Amour~
『フォーリン・エンジェル』
小春日和の暖かい日の昼休み、ぼくは会社のあるビルの屋上に昇った。
たった一つしかないベンチに座り、空を一人占めする時間が幸せだった。
当たりが出て二本になったカフェオレを持ち、ベンチに目をやる。
普段なら誰もいるはずのないそのベンチに、彼女は腰かけて、ぼんやりと空を見上げていた。
日の光でわずかに茶色に見えるサラサラの髪が、肩の下までこぼれている。
けれどそのほほは、透明なガラスを重ねたような色だった。
思わずみとれていると、彼女は急に靴を脱いでベンチにのぼり、屋上の手すりに足をかけた。
悲鳴をあげそうになるのをこらえた。繊細そうな彼女をおどろかせる方がよくないと思ったからだ。
気付かれないようにそっと近づいて、後ろから抱き下ろすつもりだった。
もう少し、という所で、彼女の体がぼくの腕の中に倒れこんできた。
小春日和の暖かい日の昼休み、ぼくは会社のあるビルの屋上に昇った。
たった一つしかないベンチに座り、空を一人占めする時間が幸せだった。
当たりが出て二本になったカフェオレを持ち、ベンチに目をやる。
普段なら誰もいるはずのないそのベンチに、彼女は腰かけて、ぼんやりと空を見上げていた。
日の光でわずかに茶色に見えるサラサラの髪が、肩の下までこぼれている。
けれどそのほほは、透明なガラスを重ねたような色だった。
思わずみとれていると、彼女は急に靴を脱いでベンチにのぼり、屋上の手すりに足をかけた。
悲鳴をあげそうになるのをこらえた。繊細そうな彼女をおどろかせる方がよくないと思ったからだ。
気付かれないようにそっと近づいて、後ろから抱き下ろすつもりだった。
もう少し、という所で、彼女の体がぼくの腕の中に倒れこんできた。