屋上から、この想いを。
風は冷たいけど、私の身体は沢村に対する怒りで沸点近い熱さが込み上げてる。
すると、私のそんなムカつく様子を見ていた新井がまた急に声を上げて笑い出した。
「あっははははっ。マジ面白れー」
「…何が面白いのよ?面白いコト言ったつもりはないけど」
「いやいや、そーじゃなくて……」
そう言いながら新井は、笑いをこらえながら少し真面目な瞳を私に向けてきた。
「すげえ似てる。アイツに」
「…私が?誰に???」
私の疑問に新井が答えようと口を開きかけた…その時。
遠くから5限の授業の始まりを告げるチャイムが聞こえてきた。
「あ。橋本、行かなくていーのか?」
「ここで教室に戻っても、気になって授業なんて手に付かないじゃない。今のアンタの言葉……」
新井はきっと、何気なく…私が自分の知っている人に似ていると口にしたんだろうけど、私は何故かすごく気になった。
私が誰に、どう似てるって言うんだろう?
正直このK高に入って2年半、私は授業をわざとサボったコトなんてなかった。
この高校生活最初のムダな時間、まさか新井のために使うことになるなんて。
人生、何が起こるか分かったもんじゃない。
「…知りたい?」
目の前の新井が、試すように私を見てくる。
…なんでだろう、目をそらすことができない。
そー言えば新井のコトなんてまともに見たことなかったけど…、結構イマドキのイケメンな顔してない???
初代・女泣かせの異名も、何だか納得……今更だけど。