Nocturne




「資料、これで合ってますか?」

「ええ、合ってるわ」




長い髪をバレッタで上げて、高そうなタイトスカートのスーツを着こなし、いかにもやり手そうなOLっぽい彼女が社長直属秘書の藤代 紫織【ふじしろ しおり】さん。


入社してからずっと面倒見てもらってる、良き先輩だ。

たまにキツイことを言われたりするけれども、私の憧れであり、目標としてる人。




「成瀬さんも入社して、2年目になったのね」

「はい」

「成瀬さんが入社してきてくれてから私もね、随分と楽になったのよ」




藤代さんに、そんなことを言われるだなんて思ってもみなかった私はすごく嬉しかった。

嬉しくもあり、何だか誇らしい気持ちになった。


けれどもそれを棚に上げずに、




「いやいや…まだ藤代さんの足を引っ張ることばかりで…」




嬉しいという気持ちを隠して、そんなことを言った。

それが私の照れ隠しだということを藤代さんは知ってか知らずか、



「ふふ、それでもいいじゃない。日々確実に進歩してるんだから」




そんなうれしい言葉ばかり掛けてくれる。

飴【あめ】と鞭【むち】というのはこのことなのかなと思いつつ。




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