Nocturne
最終章 『ロミオとジュリエット』
再会の序章
相変わらず貫禄があり、高柳グループの総帥である高柳 匡仙【たかやなぎ きょうせん】さん。
社長職は皇に譲ったみたいだが、相変わらずの威厳のある面持ちだ。
「久しいな、成瀬の娘」
「…お久しぶりです」
「人伝【ひとづて】に聞いた噂によればH大を出たそうだな」
「…はい」
息が詰まりそうなこの空間。
それより何より、匡仙さんがスタバに居ること自体が不思議でたまらない。
そして、あまり詳しくない私にでもわかるようなくらい高価そうな着物を着ている匡仙さんは、スーツや制服姿の人が多いこの空間には不釣り合いで目立っていた。
さらにSPが付いているとなれば周りの人々はさらに注目する。
「もう一度聞こう。
――――皇のことは、もう忘れたのか」
「…っ」
皇に似た、その瞳で。
どうしてそんなにも貴女は私を射るように見るのですか。
貴方は私のことが邪魔だったのではないのですか。
なのに今更どうして…。