Nocturne
私は急いで彼らが居ないほうの出入り口に走って行った。
でも、店内には人が居て。
この仕事帰りの人が混む時間帯に、身動きが自由に取れなくて。
「―――何で俺から逃げる?」
いとも簡単に捕まった。
誰にって?
そんなの、振り向かなくてもわかってる。
「…っ、離して…」
―――皇に。
「離さない」
「どうして?!」
「俺は後悔してるんだ。
…あの時、簡単に樹里の手を離してしまったことを」
「…っあれは私が…っ」
『私が一方的に言ったんじゃない』と。
言おうとした。
けれども、