Nocturne
「…実はね。高柳はね、大学時代の後輩なのよ」
「え…」
「…あの頃もやっぱり、あのルックスにあれだけ頭がよくて、帰国子女でしょう?
だから凄く女子からも人気でね。
そんな彼に一つの噂があったのよ」
「…」
「―――彼は『行方不明の最愛の彼女』がいるってね」
…行方不明の最愛の彼女…?
「あなたのことでしょう?」
「…まさか」
「彼が帰国した丁度同じ時期にあなたは大学進学するためにアメリカへ渡ってる」
そうだ。
アメリカは秋入学だけど、日本は春。
アメリカに慣れるためにちょっと早く向こうに行ったんだっけ。
それと同時期に彼は帰国。
それなら、“行方不明”と言われても頷ける。
両親には「誰にも言わないで」と言ってたし、
友人にも数人しか言ってないし、それも高校時代の、皇の知らない友達だけ。