Nocturne




…あの時。

彼を拒んでしまった、あの日。


結局は彼を拒否したけれど、どこか私は期待してしまった。

―――もしかしたら、彼は私を…。


けど。

無駄なプライドが、邪魔をした。



『毎日連絡取っていたのに、俺は樹里が苦しんでいたのも気づかなかった。
本当にすまなかった…っ』



そう言って頭を下げた彼を見た瞬間。

私が良かれと思ってしたことが、彼にこんなことをさせてしまった。


それが許せなくて。


けど、彼を見た瞬間、溢れてきた。



押さえていた“何か”が、

蓋をしていた“何か”が、


溢れ出してきた。




『ああ、私、このままここにいたら、きっと言ってしまう』




そう思ったから、私は無理やり出ていった。

何を言うかって?




< 150 / 189 >

この作品をシェア

pagetop