Nocturne
…あの時。
彼を拒んでしまった、あの日。
結局は彼を拒否したけれど、どこか私は期待してしまった。
―――もしかしたら、彼は私を…。
けど。
無駄なプライドが、邪魔をした。
『毎日連絡取っていたのに、俺は樹里が苦しんでいたのも気づかなかった。
本当にすまなかった…っ』
そう言って頭を下げた彼を見た瞬間。
私が良かれと思ってしたことが、彼にこんなことをさせてしまった。
それが許せなくて。
けど、彼を見た瞬間、溢れてきた。
押さえていた“何か”が、
蓋をしていた“何か”が、
溢れ出してきた。
『ああ、私、このままここにいたら、きっと言ってしまう』
そう思ったから、私は無理やり出ていった。
何を言うかって?